ngVLAのアンテナ群 Credit: NRAO/AUI/NSF

Technology 観測装置

ngVLAは複数のアンテナを分散させて配置し、受信された電波を結合することで、あたかも単一の電波望遠鏡であるかのように動作させる電波干渉計と呼ばれる観測装置です。ngVLAでは、263台のパラボラアンテナ群を北米全域に配置し、最大で口径8,860キロメートルの望遠鏡として動作させることで、人間の視力に換算して約600,000という高い解像度を実現します。

メインアレイとショートベースラインアレイ

ngVLAでは、3種類の望遠鏡群(アレイ)が計画されています。ngVLAの中心的な役割を担うのが、口径18メートルのアンテナ214台で構成される「メインアレイ」です。米国ニューメキシコ州ソコロにあるVLAサイトを中心に最大1000キロメートルの範囲にメインアレイのアンテナを配置する予定です。

また、メインアレイのほぼ中心の位置に、口径6メートルのアンテナ19台と口径18メートルのアンテナ4台で構成されるアレイを設置する予定です。これを「ショートベースラインアレイ」と呼び、短いアンテナ間隔でアレイを構成することによって、大きく広がった天体の観測に対して威力を発揮します。

メインアレイとショートベースアレイの配置図

ロングベースラインアレイ

これら二つのアレイに加え、超高解像度を実現するためのさらに広範囲にアレイの設置が計画されています。これは「ロングベースラインアレイ」と呼ばれ、口径18メートルのアンテナ30台を、北米大陸だけでなくハワイ州やカリブ海のバージン諸島にも配置する予定です。これにより、口径8,860キロメートルの(月の約2.6倍の大きさに相当)巨大な電波望遠鏡が実現し、0.0001秒角の解像度が実現します。これは、人の視力に換算すると約600,000にもなります。

北米全域に設置されるロングベースラインアレイの配置図

受信機と相関器

ngVLAの個々のアンテナには6つの受信機が搭載され、それぞれ違う波長の電波を観測します。これらの受信機により0.3センチメートルから20センチメートルまでの波長の電波を受信します。全米各地に設置された全てのアンテナからやってくる信号を相関器とよばれる巨大なコンピューターを使って結合し、解析処理することにより天体の画像を得ます。一回の観測で得られるデータ量は膨大で、1秒間に6.4 テラバイトものデータが届きます。これは1時間に770万本の映画をダウンロードするのに匹敵します。このためデータ転送にも新しい技術の導入が必要です。

アルマ望遠鏡の成果と技術を活かす

現在様々な観測成果を挙げているアルマ望遠鏡 新しいウィンドウが開きますも、ngVLAと同じく多数のパラボラアンテナを結合するタイプの電波望遠鏡です。しかし、アルマ望遠鏡はミリ波・サブミリ波帯を観測します。ミリ波からセンチ波帯と観測するngVLAとは波長が異なり、同じ対象を観測しても見えるものが違うため、天文学研究において相補的な役割を果たします。また、アルマ望遠鏡の開発のために日本で培われた技術は、ngVLAの実現にも大きく貢献するでしょう。